その他
先週は、家から出る排水のうち、
「雨水」の話をしました。
そこで今日は、「汚水」の話を
しようと思います。
復習ですが、家から出る排水には、
「汚水」「生活排水」「雨水」の
3種類があります。
「汚水」とは、言うまでもなく
「し尿(にょう)」のことです。
実は、この「し尿」の処理について、
江戸時代の日本は世界の先進国でした。
都市のし尿が農業用の肥料供給源になり、
近隣の農村部へ運び出されるシステムが
社会的に整っていました。
農家がお金で買い取ってくれたので、
「金肥」と呼ばれたぐらいです。
税金も使わないこのシステムのお陰で
江戸時代の日本の都市は実に衛生的!
欧米都市よりパンデミックが少ない、
世界有数の“衛生都市”でした。
近代に入ってもそれは続いていましたが、
昭和に入る頃に転機が訪れました。
近郊農地の宅地化、化学肥料の導入で、
「し尿」は、金の入る「金肥」から、
金を払って処理する「一般廃棄物」へと
変化していったのです。
それに、回収システムが崩れたので、
寄生虫や伝染病のリスクが高まり、
新たな公衆衛生対策が必要になりました。
税金を使った対策が必要になったのです。
最初の対策は、汲み取り業者を整備し、
新設のし尿処理施設で引き受けました。
しかしそれでは追いつかないので、
その次に行われた対策が、
各家庭への浄化槽の普及です。
その後、公共下水道の整備の中に、
汚水を入れていくことになります。
こうした努力の結果、現在の私たちは、
とても衛生的な生活環境を得ました。
しかし今、地方都市財政のひっ迫などで、
この環境の維持が難しくなってきています。
新しい衛生施設を追加するより以前に、
今ある施設の老朽化対策にさえ
お金が回らない状況になっています。
この先、再び汚水処理政策が、
大きな政策課題になるかもしれません。
新型コロナウイルス禍もあって
公衆衛生に関心がある今だからこそ、
こうした汚水処理の問題にも
目を向けて頂けたらと思います。
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